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「刑事弁護」の基礎知識  〜 弁護士山岸陽平の考え 〜

 ここでは、弁護士山岸陽平が「刑事弁護」・「刑事事件」にまつわることがらを解説します。
 一般的な場合についての大まかな説明ですので、特殊な場合では妥当しないこともあります。
 実際に親族等が逮捕されたときには、早期に弁護士に相談なさることをおすすめします。

 刑事事件で被疑者(マスコミでは「容疑者」)や被告人(マスコミでは「被告」)につく弁護士のことを法律上は「弁護人」と呼びます。
 このほか、刑事事件に関しては、「逮捕」、「送検(検察官送致)」、「勾留」、「起訴」など、よく報道されるけれどもわかりにくい用語が多いため、以下で説明していきます。

「刑事事件の犯人である」という疑いをかけられて逮捕された場合の流れ

 逮捕直後はどう取り扱われますか?

 捜査機関(警察官など)が被疑者(犯罪を犯した疑いのある人のことをいいます)を逮捕するためには、基本的には、事前に裁判官から「逮捕状」の発布を受ける必要があります(例外として、「現行犯逮捕」と「緊急逮捕」)。
 警察官が被疑者を逮捕したときは、逮捕から48時間以内に被疑者を送検するか釈放するか決めなければなりません。また、警察官が送検し、検察官が被疑者の身柄を受け取った場合は、そこから24時間以内(逮捕から72時間=3日間以内)に勾留請求をしない限り被疑者を釈放しなければなりません。
 石川県内で石川県警の警察官に逮捕された場合は、石川県内警察署のいずれかで留置されることがほとんどです。

 逮捕された段階で自動的に弁護人がつきますか?

 みなさんも、「国選弁護人」という言葉を聞いたことがあると思います。あとで詳しく書きますが、逮捕されただけの段階では、国選弁護人がつくことはありません。弁護士会に連絡して、「当番弁護士」を無料で呼ぶことはできますが、接見に来てくれた当番弁護士がその後も弁護人として担当するとは限りません。
 今の法律では、逮捕された直後の段階から弁護人をつけたいときは、基本的に「私選弁護人」という形になります。「私選弁護人」は、逮捕された本人や家族が自分で弁護士に費用を支払って依頼するものです。
 事案の内容によっては、この逮捕直後の対応が、後になって重要な意味をもつことがあります。

 逮捕、送検の後はどうなりますか?

 石川県で逮捕された事案の場合、その被疑者のうちの大多数が「勾留」されています。「勾留」とは、裁判官の令状(勾留状)によって被疑者の身柄を拘束するものです。勾留の期間は、1回目は最長10日間です(やむを得ない事由があると裁判官が認めると、さらに最長10日間勾留延長されることがあります)。裁判官は、検察官の請求を受けて勾留状を発布するのですが、裁判官が請求を却下することはほとんどないという現状です。私は、流れ作業で裁判官が勾留状を発布する状況になっており、本当なら勾留する理由や必要性がない事件もその中に含まれているのではないか、と疑念を持っています。
 勾留されると、一定の条件を満たす場合には、裁判官の指名により、国選弁護人が選任されます。もちろん、私選弁護人の選任を希望する場合には、私選弁護人を選任することも可能です。

 検察庁における「処分」

 検察庁は、通常の場合、勾留期間の満了までに被疑者に対する処分を決めます(勾留されていない場合は、また別です)。
 このときの処分には、大きく分けて、「起訴(公判請求)」、「略式起訴」、「不起訴」があります。
 「起訴(公判請求)」ということになると、公開の法廷で刑事裁判(正式な裁判)を受けることになります。この場合、それまで勾留されているようならばさらに勾留が継続します。
 「略式起訴」という手続となれば、簡単な略式裁判を受けて、罰金を納めるなどして釈放されることになります(罪を認めていることが前提です)。
 「不起訴」は、嫌疑がなかった場合、証拠が揃わなかった場合、刑に処すほどのものではないと判断された場合に選択される処分です。

検察官が被疑者(被告人)を裁判所に起訴した後の流れ

 被疑者 → 被告人

 検察官が被疑者を裁判所に起訴すると、その時点で、被疑者は「被告人」と呼ばれます。
 事案によりますが、1〜2か月程度先に第1回の公判期日が指定されることが多くあります。
 この間、勾留されたまま起訴された被告人は、「保釈」されないと、警察署や拘置所に勾留されたまま公判に臨むことになります。しかし、「保釈」には保釈保証金が必要ですし、保釈保証金を準備して保釈を請求すれば必ず保釈を認めてもらえるというものでもありません。特に、有罪の場合に実刑が見込まれる事案では、保釈が認められないことが多いといえます。

 論告・求刑、弁論、判決

 正式裁判となるケースでは、検察官が「論告」と「求刑」をします。
 それに対し、弁護人は、被告人の権利を擁護する立場で意見を述べます(「弁論」といいます)。
 最終的に、裁判官が、判決を言い渡します。
 第一審が地方裁判所であっても簡易裁判所であっても、控訴した場合には、高等裁判所での審理になります(民事の場合はまた違います)。

 起訴後の流れは、事件によって大きく異なる

 起訴後にどのように進むかは、事件の種類・重大性、認めているか否か、被告人がどのような人物か(前科等)、被害弁償や示談の状況などにより、大きく異なってきます。ひととおりの手続が終わるまで相当長くかかるものもありますし、短期間に集中して労力を要するものもあります。
 そのため、この点は、一般論としても語りにくいところです。

刑事弁護は「速さ」と「対応力」がカギ

 刑事弁護に必要となる「速さ」

 刑事弁護は、一般的な民事の案件に比べ、「速さ」が求められます。その理由をご説明します。
 刑事事件は、警察官による逮捕から送検まで48時間、検察官が勾留請求を決めるまで24時間、勾留満期(1度目)まで10日間と、タイムリミットが設定されています。
 この期間内に、関係各所と連絡を取り、被疑者と接見して捜査への対応をし、事案によっては被害者対応をする必要があります。それぞれのタイミングで、裁判官や検察官が重要な決定をしますので、それを意識して動かなければなりません。

 刑事弁護には「対応力」も求められる

 刑事弁護には、「速さ」だけでなく、「対応力」も求められます。
 各場面において速く動くことは重要なことですが、適切なタイミングで適切な手段をとるということも重要です。
 一般的に、刑事事件の被疑者・被告人やその家族は、多方面から厳しい目を向けられます。その中で、どの機関(人)に対してどのようなアクションをとるのか、適切に選択しなければなりません。
 私は、弁護人の仕事は、先のことを考えずに、誰かから言われたことを速くやる、というものであってはならないと考えます。もちろん、依頼者の考えを尊重すべきことは大前提ですが、先を見通して、取るべき手を打つことが弁護人の「対応力」であると思います。



☆ ブログもチェック!

● 刑事事件(逮捕時点)の報道・ニュースについて (2013.12.12作成)
● 保釈とは? (2014.1.3作成)

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